先日、友人Fから久し振りにスカイプが来た。旅行3時間前の事である。
同時刻にスカイプを送ってきた友人Mによると、
今流行りのゲームのアカウントを譲ってほしいらしい。
一度は友人Eに譲った此のアカウント、
違う友人に渡しても何の未練も無いと以前から思っていたが、
此の時、私は思い付いた言葉を並べたて、
嘘を付いた。「消した」という事を告げたのだ。本当は持ってる。
私は此のアカウントを渡したら、受け取った友人はどんどん自分から離れて行って、
何時しか私の声は届かなくなると思ったからだ。
消したって言ったって同じなのに。
彼らは新しい地で各々楽しみを見付けてるみたいだ。友人としては嬉しい気持ちだが、
新しい地へ行かない身としては、寂しさを感じずにはいられなかった。
物語には何時か終わりがある事は覚悟していたのに。
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大分脱線するが、ほんの少しだけ、断片的に、私の過去を記しておきたい。
小学校時代、私の言動が原因で、友人Kを苦しめてしまった。
一歩誤れば命を落としかねない事をしてしまった。
其の事件を聞いた友人Kの父兄・近隣住民が、自宅に沢山集まり、
沢山怒られた事を覚えている。
両親は必至になって父兄に謝っていた。
私も最初は謝った、だが皆の視線が怖くなり物置部屋に隠れてしまった。
そして物置部屋に落ちていたクレヨンで、自分の名前を大きく書いて、
名前の周りに有りっ丈の暴言等を書いた覚えがある。
其の時の私が思い付いた、反省の仕方だったのだろう。
其れから月日は流れ、彼とまた沢山遊ぶ様になった。毎日といっていい程遊んだ。
最初は償いの気持ちを持って接していたのだが、
彼はそんな気持ちで接する私に、辞めるよう言ってきた。
あんな事をしてしまったのに・・・。
素直な気持ちで接するのに長い月日を要した。
物心を理解するにも記憶する事も難しかった、小学生時代に心の温かさを覚えた。
其れから暫くして、小学校生活最後の年を迎え、物置部屋に沢山ある落書きの隅に、
自分に対しての誓いの言葉を書いた覚えがある。
こういう人間になれ、みたいな言葉だったと思う。今は、あの物置部屋があった家は無い。
あの誓い通りの人間になれたのだろうか。
高校生時代、男友達とばかりヤンチャする日々を送っていた。
此の頃から女性と話す事に意識してしまい、女友達を作ろうとは特別思わなかった。
来る物拒まず、去る者追わず。
勉強を教えてほしいとか、偶に小学・中学時代からの友人から、
話し掛けられた時位しか、女性と接する機会は無かったと思う。
唯其の中で1人、比較的話しをする様になった女性がいた。
休み時間は適当に音楽を聴きながら過ごす事が多かったが、
其の女性はやたら私にちょっかいを出してくる。
次第に其の友人Oと打ち解けて来て、
休み時間は良く音楽を垂れ流しながら、ベランダで話していた。
互いの夢なんか語り合ったのを覚えている。
友人Oは婦警になりたいって良く言っていた。
或る日朝礼で、担任から友人Oが自ら命を絶った事を知らされる。
意味が解からなかった。実感なんて湧く筈がなかった。
昨日だって何時も通り話して、挨拶交わして帰ったのに。
友人を失った辛さや今迄に無い虚無感を覚えた。
数日は、なんでそんな事を・・・と原因ばかり考えていた。
次第に、なんで気付いてあげられなかったのだろうと、
自分を責める日々を過ごす様になった。
暫くして、ボランティア部に掛け持ちで入部した。
偽善心でもいい、何か人に役立つする事をすれば、
此の傷は癒えるだろうと漠然とした理由だった。
ヤンチャばかりしてた時より、何か違った楽しさがあった、
なんだろうか、幸せと言うか満足感というのだろうか・・・、
公民館を利用して子供達とレクリエーションしたり、
地元を中心に只管ゴミを拾い、学校から遠く離れた人通りの多い駅での、
「
あしなが募金」の活動もした。終えた時の達成感は格別だった。
次第に友人Oとの思い出は記憶から薄れてしまっていた。
あの日、此れ美味しいよね、此のネタ他の友人に言ったら絶対笑う、
そんな沢山の事を忘れていってしまった。最低だ。
高校卒業後、訳あって某企業に就職した。
進学出来なかったのを人の性にしたかった自分がいた。だが、全て自業自得だ。
入社当初はアルバイトという形で働かせてもらった。
初めは緊張して、同僚や上司と打ち解けるのに凄い時間を要した。
コミュニケーションを取るのに苦労はしたけど、仕事は死ぬ気でやった。必死に貯金した。
仕事を覚えていく内に自身が付き、自然とコミュニケーションが取れる様になった。
上司にも沢山可愛がってもらった。
1年が経ち、専務から正社員にならないかと言われた。
更に稼げるチャンスだと思い迷わず、書類にサインした。
正社員を目指してる人は、全国に数え切れない程いる。
其の中から私が選ばれた事を本当に嬉しく思った。
1ヶ月後、晴れて正社員となり益々自分が成長していくのが楽しみだった。
だが、此の頃から上司達から理不尽な暴力を受ける様になった。
でも此の仕事を辞めるわけにはいかなかった。唯がむしゃらに働いた。
同僚や家族からの心配は私の耳には届かなかった。
毎日の様に親しく接してくれた上司達に裏切られた思いは、本当に辛かった。
此れ迄、弟達には兄らしい事が出来ただろうか。金銭面で幸せを与える事ばかり考え、
何か大事な事を教える事が出来なかったかもしれない。
でも君達はもう、兄の背中を超えて立派に成長した。
迷惑ばかり掛けてしまってるが、確かな絆を感じる事が出来る。
此の思いは一生大切にし、命を賭けてでも守っていきたい。
入社してから2年程経ち、私の体は限界を感じ悲鳴を上げていた。
同僚やB部長、家族や親友達の心の支えだけで何とか動けていた。
或る日、久し振りに仕事を早く終える事が出来、自宅で風呂に入ろうとした時の事、
ドアの隙間から私の体が見えてしまったらしく、母親が驚いていた。
私の体は傷だらけで、肌の色を探すのに苦労する程、
全身に無数の傷があったらしい。言われる迄気付かなかった。
此の時初めて失ったモノの大きさを実感した。仕事を辞めさせられるのが怖くて、
支えてくれた人達の言葉を、適当に聞き流してしまっていた自分を憎んだ。
泣き崩れた。恐怖心や絶望感、色んな思いが交錯した。
なんて自分は不器用で、馬鹿で、臆病者なんだ。
其の日を境に今迄受けた傷を清算すべく、戦いが始まった。
B部長には本当に御世話になりっぱなしで、感謝し尽くせない。
戦いを終え暫くして、B部長は此の世を去った。
でも確かに感じる事が出来る絆みたいなモノがあった。
もう届かないかもしれないけど、彼に対する感謝の気持ちは絶える事は無いだろう。
今迄ありがとうございます。あちらに行っても酒と煙草は控えて下さいね。
ゆっくり御休み下さい。
其れから月日は流れ、進学した。
今迄受けた心の傷を表情に出さない様、
積極的に触れ合い、沢山の掛け替えの無い親友が出来た。
沢山ヤンチャし、毎日の様に遊びまくってた様に思う。
あの頃の自分がしたかった事、失ったモノを徐々に取り戻していった。
此れだけだと、何の為に進学したのか疑問に思われるかもしれない。
けど、後悔なんて全く無かった。
此の時、此の場所だからこそ出会えた親友との思い出は、一生の宝物だ。
此の学校で出来た親友のTに、
靴と必死になって御金を貯めて免許を取って乗り回していた愛車を、
煙草で焦がされた事がある。
なんで怒らないのとか、優し過ぎるよとか言われたのを覚えている。
其の親友Tとの友情が無くなるのを恐れて怒らなかった、
そんな思いが心の奥底にあったかもしれない。
でも彼は私の命の恩人の1人だ。
故意でやったか如何であれ、こんな御金で解決出来る些細な事で怒っても、
何のメリットも無いだろう。私は今でもそう考えている。
人を殴る痛さ、人から殴られる痛さ。
人を頭ごなしに叱る無意味さ、十分に学んできたつもりだ。
卒業した今でも、彼との交流がある。
此れが絆、友情なんだろうなとしみじみ感じる事が出来る。
唯1つだけ心残りな事がある。
或る日突然無責任な事を押し付け、学校を辞めると言った親友Sを止めるどころか、
感情的になり一方的に怒って、拍車を掛けてしまった事だ。
互いの家は可也遠いのによく、我が家に泊まりに来ては遊んだ。
私のライフスタイルの一部に必ず彼が居て、必要不可欠な存在だったと思う。
十分に学んできたつもりだ。とか偉そうに書いたが、
私は未だ人間として未熟者で、愚かで、見栄っ張りで、負けず嫌いで、
大嘘付きで、本当に幼過ぎる。
時が来たら、彼に謝りたいと思う。今は未だ互いに其の時ではないのだろう。
此の歳にして、どんな人にも愛を持って接する様にしようと思った。
愛を持って接する事の大切さは、また別の世界で学んだ事なのだが、
此れはまた別の物語。
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どんな時でも人は絆だったり友情だったり、
「人との繋がり」を感じなければ生きていけないと思う。
少なくとも私はそうだ。1人でなんて生きていけない。
金銭的な部分では決してない、心の部分だ。
大分脱線してしまったが、話を戻す。
旅行から帰って来て、
今度は別の友人達からスカイプで別のゲームのアカウント絡みの話が来た。
咄嗟に私は其々嘘を付いた。友人を試したのである。最低だ。
「消しちゃったw」
「いいですよ~!飽きたからあげますよw」
「すみません。パスワード忘れちゃったので、分かり次第また後で連絡しますね。><;」
此の3通りだ。人其々考え、ルーツが違う。
此の世界で長い間、苦楽を共にしてきた友人達に私との絆が出来たか知りたかった。
「消しちゃったw」
此れを告げた友人は、何時もと変わらない様子だった。
嬉しかったが、確実に一歩ずつ遠くに行ってしまう事を感じた。
10分に満たない会話だった。新しい世界に夢中なのだろうか。
でも元気で変わらない様子に嬉しさを覚えた。
「すみません。パスワード忘れちゃったので、解かり次第また後で連絡しますね。><;」
此れを告げた友人は、此方から話題を持ち掛けても、
そそくさと逃げる様に会話を終えてしまった。何か寂しさを感じるが、忙しいのだろう。
「いいですよ~!飽きたからあげますよw」
此の人にはくれてやった。彼は教えてあげたIDとパスワードを使い、
ログイン出来る事を確認すると、会話を終えていった。
其の後直ぐ、私がログインし直して、譲渡したアカウントを消した。
此の人とは長い間付き合いがあった、周りからの人望も厚かった様に感じる。
だが、
友人「もうあそこに戻るつもりはないw」
私「でも、皆さん心配していましたよ?せめて御別れの挨拶でも・・・。」
友人「もう萎えちゃったし、静かに消えるわw」
此の部分で今迄忘れていた怒りが爆発した。
貴方の地位・役職が如何とか関係ない。
貴方は確かにあの世界にいて、苦楽を共にした仲間が居た。
現に今心配してる人達がいる。
其の人達に別れを告げない。少なくとも私と会話する時間があったのに。
大袈裟かもしれない。でも許せなかった。
あの頃の貴方の優しさは嘘じゃなかったと信じたい。
チャンスを与える為にログを晒さないとかじゃない。
貴方がきっちり旅立ちの準備を済ませる事を信じているからだ。
御願いだから、私1人に別れを告げる役を押し付ける事はしないでくれ。
今の薄情者の貴方に利用される程、私は落ちぶれていない。
義だ人情だ仲間だ、上っ面だけの綺麗事を並べるのは大いに結構。
何時か其の満遍なく塗りたくられた仮面は剥がれる時が必ず来る。
私だってそうだ。人の事は言えないし、嘘付きだし、
逃げたい事から目を背けてきた事もあり、
何気無い一言で相手を傷付けた事は沢山ある。
だけど目の前で傷付かずに済む方法があるのに、
自分の都合だけで、友人達が傷付くのはもう見たくない。
大勢の、仲間と思えた人達に裏切られる苦しさは、言葉に出来ない。地獄だ。
顔が見えない相手同士で、此の世界を歩んできた。
文字のみの意思の疎通だから、こんなにも絆が薄いモノなのだろうか・・・。
辛く・・・苦しい・・・。
昔の自分には想像出来ない。
こういった世界で真面目に人との繋がりとか考えてる今の自分を。
当時の自分の考えで、ゲームセンターで知らない人同士で戦いあって、
勝ったら優越感に浸って終了。今居る世界に対して、其れと同じ見方だっただろう。
「自然消滅」
其の人のやり方かもしれないし、相手を思っての事かもしれない。
ただ、草生やして薄情な事ばかり言って、
人に無責任に辛い事を押し付けて、意気揚揚と消えるのは許せない。
此の世界には、其々人がいて媒体は違えど、其々の思いや考えが交錯している。
貴方1人だけの世界じゃない。
恥ずかしい話だが、此の世界で心惹かれる人と出会った。
其の人は私が忙しい時や、辛い時に励ましてくれたり、
笑わせてくれた。何気ない一言に物凄く元気付けられた。本当に嬉しかった。
私は恋心に近いモノを抱いていたのだろう。
貴女は段々遠い世界に旅立って行くだろう。
私は自分が傷付くのを恐れて気持ちを伝える事が出来ないでいる。
悲しい。自分が憎い。未だ其の時では無いと言い聞かせている自分がいる。
週に一度位、貴女は元気な姿を見せてくれる。
元気で楽しくいて、時折話し掛けてくれる事に嬉しさを感じた。
でも今回の事で未練は無くなった。何時別れの時が来ても、
笑顔で送る事が出来るだろう。本当にありがとう。
楽しい筈の旅行を挟んで色々な事が起きてしまって、
深く考え過ぎなのかもしれない。だけど決意は固まった。
今抱えてる、此の辛い・苦しい思いを払拭する方法を嘗て知っていた。
だけど其れは忘却の彼方とも言える程、遠い、記憶の断片。
如何やら1つの物語に終止符を打つ時が来た様だ。
だが、其れは直ぐでは無い。
或る友人から、人の温もりを教えられ感動させられた。
彼女にとっては些細な事かもしれない。でも其の言葉1つ1つに、
心が打ち震え涙が零れそうになった。
其の友人と御互い或る約束を交わした。
其の約束だけは守っていきたい。
約束を果たした時、物語は終わりを告げるだろう。
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